皆さん、Fred Risterという人物をご存知でしょうか。
名前自体はあまり聞いたことがないかもしれませんが、彼はDavid Guettaと共に十数年に渡って数多くの楽曲を作っており、どの曲も一度は聴いたことがる大ヒット曲ばかりなのです。
自ら表舞台には出らず、David Guettaの右腕として音楽プロデュースやソングライターに徹し続けたFred Risterについて紹介したいと思います。
目次
- 1 Fred Risterとは
- 2 人生で初めて自分名義の曲を発表
- 3 David GuettaとFred Risterが一緒に作った曲の数々
- 3.1 David Guetta & Chris Willis – Love Is Gone
- 3.2 David Guetta Feat. Kelly Rowland – When Love Takes Over
- 3.3 David Guetta Feat. Kid Cudi – Memories
- 3.4 The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling
- 3.5 David Guetta – Without You ft. Usher
- 3.6 David Guetta Feat. Rihanna – Who’s That Chick?
- 3.7 Kelis – Acapella
- 3.8 Flo Rida – Club Can’t Handle Me ft. David Guetta
- 3.9 David Guetta – Play Hard ft. Ne-Yo, Akon
- 3.10 David Guetta – I Can Only Imagine ft. Chris Brown, Lil Wayne
- 3.11 David Guetta – Lovers On The Sun ft Sam Martin
Fred Risterとは
Fred RisterことFrédéric Ristererとは、フランス出身の音楽プロデューサー/ソングライター。
1961年6月19日生まれの57歳(2019年6月4日現在)で、同郷のスーパースターDJ/プロデューサー、David Guettaの良き音楽パートナーで親友でもあります。
Fred RisterはこれまでDavid Guettaとともに、Black Eyed Peasの“I Gotta Feeling”やFlo Ridaの“Club Can’t Handle Me”, Kelly Rowlandの“When Love Takes Over”, Usherの“Without You”, Rihannaの“Who’s That Chick”, Chris Willisの“Love Is Gone”などなど、多数のダンスミュージックを生み出し、世界にダンスミュージックというものを浸透させ一時代を築いた人物のひとりと言っても過言ではありません。
まだ当時7歳だったFred Rister少年は、川岸でアイスクリームを食べていたときに、偶然ジュークボックスから流れてきたイギリスのロックバンド、Procol Harumの“Whiter Shade of Pale”に感銘を受け、音楽の世界で生きていくことを決意します。
元フットボール選手であったFred Risterの父親はホームパーティーでアコーディオンを弾くことがあったのですが、それがまた彼の好奇心を掻き立て色んな楽器に触れたいという欲求が増大しましたが、キーボードやピアノは高額なため買ってもらえず、自分で作ったダンボール製のドラムで演奏していました。
そして1977年、まだ10代だったFred Risterはベルギーのデ・パンネにあるクラブ StardustでDJの姿を見て、自分も音楽で多くの人々を躍らせたいと思い始めます。
音楽に関わる職業に就くためにも音楽学校に通いたかったのですが、家庭の経済的理由で通うことができず美容師に就職。
しかし音楽に対する情熱は消えることはなく、勤務終了後にはフランス・ダンケルクの音楽ラジオ番組でラジオパーソナリティとして活動し、美容師として働きつつも週末になると地元のクラブでDJを行ったり、ラジオ局でDJのスキルを高めて、地元のDJコンテストに参加してクラブでのレジデントを勝ち取ったりしていました。
自分の大好きな音楽を求めて3足の草鞋を履く生活を送っていたFred Risterですが、24歳のときに初めて結腸癌と診断されます。
1回目の癌は免疫療法で治癒することができ、ラジオDJとしての才能がパリでも多くの業界の人たちに注目されるようになったFred Risterは活動の幅が一気に広がり、1991年には音楽プロデューサーのJean-Patrick AlloucheとBruno Sanchoni, フランス系ガボン人シンガーのAbyaleとともに“I Wanna Be Your Lover Too”をリリース。
そのほか「Mory Klein」名義やJacky Aruと組んだデュオ「Ixxel」としても曲をリリースしていた時期もあります。
さらにMaxximumでラジオDJをしていたときに知り合ったフランス出身のDJ/プロデューサー、Joachim GarraudはDavid Guettaの友人であり、“Love Don’t Let Me Go”の共同プロデューサーでもあるのですが、彼からの依頼で2002年に“Love Don’t Let Me Go”の公式リミックスを担当。
その後、David Guettaがサードアルバム『Pop Life』を制作するために再びFred Risterに声をかけたとき、Anakleinが契約していたレーベル、3E Mediaが倒産してしまいお金がなかったため、この話を受けます。
『Pop Life』のセカンドシングル“Love Is Gone”の制作で初めてDavid Guettaと直接会い、以降David Guettaと独占契約を結び二人三脚で数多くの楽曲のプロデュースを行っていくことになります。
この間、最初の癌発覚から19年後に2度目の癌が確認され、同時に彼の闘病生活もスタートするのです。
DJとしてツアーやショーで世界中を回ると体力を消耗してしまい、身体的な痛みが起きたときに対処するのが難しいこともあって、Fred Risterはプロデューサーとしてスタジオで多くの時間を費やし、自分のペースで新しい曲のアイデアを考えることにしました。
ときにはメランコリックを曲を作る上で自身が病気を患わっていることが役に立つこともあったのだとか。
Fred RisterにとってDavid Guettaは兄のような存在であり、インタビューでも「彼はアーティストで自分は最も有名な見知らぬ人物。名誉などはいらないし、ただ誰かのために働くことを喜びとしているだけ。」だと語っています。
“I Gotta Feeling”と“Without You”で2度に渡ってプラチナディスクを獲得し、グラミー賞やASCAP賞にもそれぞれ5回以上ノミネートされたことのあるFred Rister。
Black Eyed Peasとの“I Gotta Feeling”は第52回グラミー賞で年間最優秀レコード賞と最優秀ポップパフォーマンス賞デュオ/グループを受賞し、Super Bowlに出演するためにリムジンで到着した際、Fred Risterのみ警備員に止められたことがありました。
誤解が解けて中に案内されたときも「自分は名前を覚えてもらいたいとも思わないし、スターではなく音楽の職人としてただ曲を作っているだけ。」だと舞台に立つことを断ったこともあるそうです。
あくまで裏方として働くことを自ら選んだのですが、David Guettaの数々のヒット曲はFred Risterなしでは生まれなかっと言っても過言ではなく、それらの曲のプロデューサーやソングライター欄には必ずFred Risterの名前がクレジットされています。
David Guettaが2018年9月に出した7枚目のアルバム『7』では、David Guettaの別名義「Jack Back」として収録している“Pelican”と“Think Think Think”の2曲だけプロデュース/ソングライターとして参加していますが、Fred Rister自身の健康問題に加えて、David Guettaは今自分だけの曲を作りたいと思っており、Fred Risterのスタイルとは違ったよりアーバンな音楽を求めていることもあって共同制作の頻度は少なくなっています。
David GuettaはFred Risterだけでなく、Giorgio Tuinfortというプロデューサーともよく共同で曲を作っていたりと、自分の作品にあまり関与していないのではないかと指摘する声が時々見受けられますが、Fred Risterはこれは否定しています。
というのも、David Guettaは普段思い付かないようアイデアを人々から引き出し、自身も啓発的なアイデアをどんどん出してくれるそうで、David Guettaからはそのアイデアをキーボードで弾いてみるようお願いされるのですが、その度にFred RisterはDavid Guettaに対して「自分が出したアイデアなんだから、自分の方がどうやって弾いたら方がいいか分かっているだろ」と言い聞かせているのだそうです。
人生で初めて自分名義の曲を発表
今まで自分の名前を公に明かさず曲を作ってきたFred Risterですが、一度だけ自分の名義で曲を出したことがあります。
それが2018年3月にParametric Recordsから出したSam MartinとChris Willisとのコラボ曲“I Want A Miracle”です。
Fred Risterは約30年間の間に結腸癌2回、腎臓癌、骨腫瘍など9回以上も癌になり、回復と再発を繰り返してと長きに渡って癌と闘ってきました。
これまで何度も癌を克服してきたように音楽は病気なんかよりも強いと信じており、手術後に病室で目を覚ましたときは毎回、「今回もやった!」「まだ生きている!」と自分を奮い立たせ、またスタジオに戻って作業を再開してきたのです。
医者からも生きていくためには化学療法を毎日続けなければならないと言われ、これまで化学療法を続けてきましたが、薬を服用中は腫瘍は消えるものの、服用を止めた途端その数ヵ月後には腫瘍が再び出てきて、副作用にもこれ以上耐えられなかったため、“I Want A Miracle”に取り掛かるタイミングで今後は化学療法は一切しないことを決意しました。
Fred Risterはは今までも収益を癌の研究機関などに寄付してきましたが、この曲の売り上げもまた全て「Kidney Cancer Association(腎臓癌協会)」に寄付されるようになっています。
“I Want A Miracle”は化学療法なしで作り上げた曲で楽曲そのものが最善の療法だと捉えており、私たちがiTunesやApple Musicで曲を購入したり、Spotifyなどで再生することで癌の研究に貢献することができます。
そのためこの曲はFred Rister含め癌と闘う全ての人への希望にも繋がるとても重要な意味が込められた曲でもあるのです。
Trailer “I Gotta Feeling” – documentary from LUCIEN PROD on Vimeo.
Fred Rister本人の強い希望で、自身の友人であるSam MartinとJason Evigan, Chris Willisとこの曲を作り上げたのですが、3人にインスとバージョンを送ったところ、すぐに気に入ってくれてコラボすることが決まったそうです。
2017年の春に、医師から化学療法を止めたら1年か2年しか生き延びられないと警告されたものの現在も力強く生きており、このタイトルは彼自身の心の叫びであり、曲中の“I want a miracle, show me a sign/ ‘Cause I don’t feel ready now, to say goodbye.(奇跡が起きて欲しい。まだサヨナラを言う準備ができていないから)”という歌詞も心に響きます。
寿命を縮めることになっても化学療法から解放された今、彼は後悔なく自分の人生を精一杯楽しんでおり、手遅れになる前に“I Want A Miracle”という最後のプロジェクトを遂行することができてとても嬉しいとコメントを残しています。
現在、Fred Risterは晴れの日が多いLAではなく、敢えて雨や曇りの日があるフランス北部のリールで生活しているのですが、この地には「Catfield」と名付けた自分の小さなスタジオがあり、“I Want A Miracle”もここで誕生しました。
Daft Punkのようなフレンチタッチを含み、シックなギターの音色とボコーダーが70年代を彷彿とさせるサウンドとなっており、イギリスのロックバンド、Duran DuranのDom Brownにギターを弾いてもらい、Jason EviganとSam Martin, そしてFred Risterで歌詞を考えてヴォーカルをレコーディングし、NexusやSylenthは使わず、ピアノやストリングスとの相性が良かったサンプラー、Kontaktで作り上げています。
この曲は後にThe MagicianやKC Lights, David Guetta, Fred Rister自身によるダンサンブルなミックスバージョンもリリースされているので是非聴いてみて下さい。
David GuettaとFred Risterが一緒に作った曲の数々
David Guetta & Chris Willis – Love Is Gone
David Guetta Feat. Kelly Rowland – When Love Takes Over
David Guetta Feat. Kid Cudi – Memories
The Black Eyed Peas – I Gotta Feeling
David Guetta – Without You ft. Usher
David Guetta Feat. Rihanna – Who’s That Chick?
Kelis – Acapella
Flo Rida – Club Can’t Handle Me ft. David Guetta
David Guetta – Play Hard ft. Ne-Yo, Akon
David Guetta – I Can Only Imagine ft. Chris Brown, Lil Wayne
David Guetta – Lovers On The Sun ft Sam Martin
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